先輩秘書からのメッセージ 湯本 壬喜枝

秘書として経営の中枢を担うStrongPartnerを目指そう

 一営業担当として、人事担当として、ダイバーシティを専門分野とするキャリアコンサルタントとして、「どうしたら女性が活躍できるか」を長く考え続けてきた。
見つめ続けるとわかることだが、大きく変化するのは、全て新しい法律ができたときだ。4月から施行された女性活躍推進法。厚生労働省の、300人以上の企業の業界ごとの比較サイトをご覧いただきたい。今、大きな変化のうねりがきているのを実感できる。もう一つの変化は、震災とリーマンショックを経て女性が勤めを辞めなくなっていることだ。
 秘書の皆さまにはこの大きなうねりを逃さないでもらいたい。そのためにもっとも大切なことは「秘書の役割はサポートに留まらず、上司の持てる力を最大限に発揮してもらうStrong Partnerになること」であると捉え直すことではないだろうか。秘書の仕事を極めると自分も高いレベルで成長することになる。経営の中枢に接することができる人ならではのコンセプチュアルスキル、高度なコミュニケーションスキルを磨くことができる。秘書という仕事は、企業の未来の発展に大きくかかわる重要な役割を持つポジションである。戦略の中核にかかわる幸せをかみしめてもらいたい。
 私は、アフラックの顧問時代から10年以上、ダイバーシティと働き方の見直しに業種・業界を超えて取り組んできた。なぜかと言うと私自身、スタートこそ日本IBMのSE職位として厳しく長い教育を受けていたが、大した仕事もせず専業主婦になっていて、そのままいけば自分がどの程度仕事ができるかを知らないまま人生を過ごすはずだった。ところが人生そんなに順調ではない。33歳で主人を亡くし、子供二人と路頭に迷ってからアフラックに拾ってもらった。そこでは、自分ができるかどうかなどおかまいなく、高めのボールがいつも飛んできた。それをジャンプして掴んでいるうちに何だか世界が開けてきて、最後は人事担当役員を経験させてもらった。考えてもみない展開だった。
顧問になると同時にカウンセラーとして、キャリアコンサルタントとして学び直しているとき、ある会合での出会いから、電機業界T社の女性管理職予備軍による「自分の仕事の現在と未来」の発表に対してのコメントをしてほしいとの依頼を受けた。

その発表のレベルの高さは脱帽ものだった。しかし、T社には約3,000人の女性社員がいても管理職はわずか3人。アフラックの人事担当役員として一気に4人の営業支社長を送りだしたこともある私には、信じられない事実だった。続いて通信トップのK社で全役員、全部長、それに一部女性に対する講演依頼を受けた。K社も2,000人の女性の中で管理職はたった一人。とにかく驚いた。
また、この講演準備を機に女性の活躍について調べてみて、驚きの事実をあらためて知った。日本は、ジェンダーギャップ指数が世界145カ国中で101位であり、先進国の中ではるかに遅れているだけでなく、アフリカや、南米の後塵を拝する状態だった。一方、国連が毎年発表する人間開発指数(教育年数、人間らしい生活水準、長寿で健康な生活)では日本は世界のトップグループだった。(188カ国中20位)。
 私の世代は結婚後も仕事を続ける女性は稀であった。専業主婦で過ごした友人たちの「自分も仕事がしたかった」、「自分の力を試してみたかった」、「自分だってできたはずだ」という密かな心のつぶやきをよく聞いていた。そのような友人たちに「実力を発揮して働く喜び」を味あわせたかったと思い続けてきた。日本はもったいないことをしたと思っている。一億総活躍社会への取り組みが始まったが、人口動態から考えて20年遅いと思っている。
 これからの皆さまはあまり過去の常識にとらわれず、のびやかに活躍していただきたい。「こんなものでいい」とか、「これが過去の先輩たちの常識だった」などと全くこだわる必要がない時代に入っている。
 秘書は、そもそも仕事ができる女性、日本の女性の先頭を走る女性がついた職業だった。男性秘書の皆さまが経歴を重ねて役員になられるなら、女性の皆さまもなってもいい。これからは秘書から経歴を積んで企業の中核を担い、役員にも登用される女性が続々登場するそんな時代になってほしい。時代になるであろう。

〖機関誌「秘書」2016年6月号 掲載〗