先輩秘書からのメッセージ 藤村 やよい

秘書と信頼

 日本秘書協会に1991年に入会し、今年で25年になります。1992年のアジア秘書会議には一週間参加し、1993年から行われている全国秘書会議には皆勤しています。福岡からの参加ですが、毎年充実した会議です。2008年には日本秘書協会賞を頂戴しました。その時の受賞スピーチでも申しましたが、私は秘書学を学び、秘書を経験し、そして秘書教育の道に入りました。秘書の仕事を10年しましたが、秘書の仕事が天職と思えるほど好きでした。上司の退職時、これまでどおり別の上司について秘書を続けるか、秘書教育に入るか悩みました。しかし、私が好きな秘書の仕事の醍醐味を若い人に熱く語り継ぐのも大切な仕事だと考え、秘書教育の道を選びました。現在、秘書学概論や秘書実務などを教えていますが、学生に秘書の仕事を熱く語っています。
 その熱く語っている中に「信頼」という言葉が何度も出てきます。それは、私が10年間の秘書経験の中から感じたことで、秘書業務を遂行するためには、まずは上司と秘書の間に揺るぎない信頼関係を構築することが大事だと思うからです。
 信頼とは「ある人や物を高く評価して、全てを任せられるという気持ちを抱くこと」(大辞林2007第3版)とあります。大きな仕事を成功すればそれなりの評価を得ますが、秘書業務をきちんと遂行し、日々の小さなことの積み重ねで、上司からの「信頼」を築けます。信頼を得るためには時間がかかりますが、信頼を失うのは一瞬です。上司からの信頼を得ることによって、自分が認められ、必要とされていることを実感できるので、仕事が楽しくなり、仕事への達成感や満足感も高められていきます。仕事を好きになると仕事を極めようと努力を惜しまなくなるため、能力が向上し、仕事に対する自信にも繋がっていきます。一方、信頼関係が崩れていくと、上司に不信感を抱かれ、仕事に必要な情報が入りにくくなったり、仕事が進めにくくなり、他部署への異動などが考えられます。

 「上司は秘書を選べるが、秘書は上司を選べない」とは良く聞く話です。多忙な上司の補佐機能に必要なのが、上司からの信頼です。上司の意向、仕事の進め方、ものの考え方、好み、立場などをよく理解することです。そのためには、相手の立場に立ったものの見方が必要です。仕事の進捗状況を上司から尋ねられる前に秘書から報告することや悪い報告ほど早くして、問題があれば相談するなど、報告・連絡・相談(報連相)をしっかり行うことです。また相談したことに対する報告も忘れてはなりません。秘書は上司の意向に添った日々の秘書業務を重ねていくことで、「この秘書に任せていれば安心」と上司の信頼を得ることができます。 上司に信頼され、秘書として豊かな経験を積むことが、瞬発的な判断力や行動力に繋がります。また、経験を積むことで相手の気持ちを理解でき、「さりげない」心遣いや気配りなどの心の働きができるようになり、人としての幅や人柄の良さが、相手に感じの良さとして自然に伝わります。また温かな心の働きができる秘書は、その人柄が顔に出て品格が備わってきます。常に新しい知識や技術に関心を持ち研鑽に励み、秘書業務を円滑に遂行することで、上司や周囲から信頼され、誰もが認める優れた秘書になりたいものです。
 結びに、今春4月に九州支部が発足しました。まだ小さな支部ですが、今後の九州支部の成長を見守っていただき、九州支部の活動を通して日本秘書協会の発展に微力ながら貢献できれば嬉しく存じます。 

〖機関誌「秘書」2016年7月号 掲載〗