先輩秘書からのメッセージ 高橋 遠

お客様の視点

早いもので社会に出て40年以上の日々が経過しました。この間の秘書室や社長室勤務の経験から、伝統ある日本秘書協会の理事を拝命したものと思います。秘書業務に携わる多くの方々のお役に少しでも立つことができれば幸いです。
 今回原稿を執筆するにあたりテーマを検討しましたが、現在私が関わっている事業に触れさせていただくことをお許しいただきたいと思います。
 2003年に政府が「観光立国」を標榜してから10余年、訪日旅行者数は1,000万人の大台を大きく超え、2020年に開催が決まった東京オリンピック・パラリンピックもその後押しとなり、今後しばらくは高い成長率で伸びていくものと推測されます。ホテル業界は、訪日外国人増加の恩恵を受け、ここ数年客室稼働率、客室販売単価とも好調に推移し、活況を呈しています。
 私が社長を務める東急ホテルズでは、本年4月より「東急ホテル」(ラグジュアリブランド)、「エクセルホテル東急」(シティホテルブランド)、「東急REIホテル」(ミドルホテルブランド)の3ブランド体制へ再編成しました。当社は、国内ホテルチェーンとしては数少ないラグジュアリーからビジネスに至るまで複数のカテゴリーにブランドを展開するホテルチェーンでありますが、半世紀を超える歴史の中で、統合や新ブランドの創設、リブランドなどを繰り返し、現在に至っています。傘下ホテル数は約50店舗に達し、営業収益も含めてその規模では国内有数のホテルチェーンへと成長しました。
 ただ、1972年の第1号店開業を皮切りに一時期飛躍的に店舗数を伸ばした「東急イン」は、わが国における事業モデルとして草分け的な存在のブランドホテルでもありましたが、展開当時とは様変わりした現在の事業環境において、当社が本来目論んでいる提供価値とお客様の価値観とで差異が生じ、特に地方店舗においては後発の競合店舗との競争に晒されることが多くなってきました。同時にブランド数の多さ、複雑となったブランド体系もお客様には分かりづらさをもたらしていました。

 ホテル業界は日本の高度成長とともに急速に拡大したものの、インバウンドが2,000万人に達しようという現在、第2の大きな転換期を迎えようとしています。長年にわたって使用し、お客様の支持を得てきたブランドであっても、自社・他社問わず、新しい環境に適合するための変革・変換が常に求められています。東急ホテルズの強みは、どのようなお客様も国内外を問わず、多面的にお迎えすることが出来る複数ブランド体系にありますが、前述のようにその複雑さが弱みでもありました。
 そこで、当社はこの複雑性を解消し、まずもって「お客様の視点」でその提供価値を分かりやすくシンプルにすることで、幅広く多くのロイヤルカスタマーを獲得することが出来るようブランド体系を再編することとしました。「お客様の視点」は、ホテル業界ばかりでなくいかなる事業・業務にも共通する極めて重要なことです。同時にブランドやブランドプロミスにおいて、「お客様視点」からの企業としての決意を表明することは、これまた普遍的なことと考えています。東急ホテルズでは、いずれのブランドもそのブランドプロミスにおいてそれぞれのお客様に合わせた「おもてなし」を掲げており、特に新ブランド「東急REIホテル」に統合する「東急イン」においては、「ホテル」と名乗りを変えるこの機会に、まずはホテル品質のサービスを提供できるよう、従業員の意識改革、加えて複数言語対応をはじめとしたグローバル対応に取り組んでいく覚悟であります。