秘書とは

ひと口に秘書といっても、いろいろな種類があります。また、同じ「秘書」という職種でも、日本型の組織のなかでは、何人もの秘書たちがいるグループ秘書制度をとっている企業があります。その秘書たちを管理、指導する秘書部長や秘書室長もまた秘書。一方、外資系の組織では、マンツーマン型の組織がほとんどです。会社が秘書に求める機能や働き方は、企業の規模や組織によって異なります。また、オフィスでの機器の進歩や、経済の動向につれて秘書の仕事の内容も変化しているのです。
では、どのような人が「秘書」という仕事をしているのでしょうか。
秘書は、企業や団体のトップの近くで働いています。人の上に立つ企業のトップたちは、知識、経験ともに人よりすぐれ、リーダーとしてのすばらしい資質を備えていることが当たり前。このようなすばらしい指導者に終始接していることで秘書はいろいろな面で高められます。自分の上司がどのような目標に向かって苦心しているか、仕事上どんな理念をもっているか、文化的なことにどんな理解をもっているか。このようなことをなるべく理解したいと考え、努力することが秘書の企業人としての知識と経験を増し、人格や教養を高めるのです。
また、接遇業務を通じて、いろいろなレベルの来客に接する機会が多いことにより、洗練されたマナーと言葉遣いを身につけることができます。洗練された服装や外観もすべて、自分の経験から身につけたセンスから発するもの。すべて、秘書という職業を通しての苦労と努力が自分自身の進歩につながり、秘書という仕事をしている人間を形成していくのです。

秘書の概要

秘書の仕事をひと言で言うと、「上司が仕事を成し遂げていくのを助ける」こと。秘書が配属されている企業のエグゼクティブ(経営幹部)たちは、責任の重い難しい仕事を抱え、それをやり遂げるために日夜苦労をしています。大きい会議や難しい商談を成し遂げたとき、上司たちは、「この秘書がいてくれてよかった!」と感じることがたびたびあるといいます。「よい秘書」は上司の片腕として、どうしても必要なのです。
「秘書の仕事ってただ手伝っているだけ?」と思われるかもしれません。確かに、手伝いが秘書の仕事です。しかし、上司であるエグゼクティブが成し遂げなければならない重要な仕事に、秘書として十分に力を貸し、上司との一体感をもって仕事を成し遂げた時の感動は、秘書をしていてこそ味わえるもの。「秘書ってすてき!」と思わせる秘書は、みな、このような達成感を味わうことが出来る一流の秘書なのです。
もちろん、一朝一夕でこのような一流の秘書が生まれるわけではありません。このような秘書たちも、はじめは初心者としての時代がありました。そして、基本的な細かい仕事の処理法を徐々にマスターし、仕事の知識を増やし、人間的にも成長しながら、一流の秘書になる道を歩いてきたのです。

日本の秘書事情-さまざまな秘書の形態

日本では二つの形の秘書があります。ひとつはグループ秘書、もうひとつは個人秘書です。
グループ秘書は日本独自の制度で、日本の多くの企業や団体がこの制度をとっています。秘書グループの長(秘書部長、秘書室長、秘書課長)の管理のもと、秘書たちがチームとして経営陣を支える制度です。
この制度では、管理上、秘書たちは秘書グループの長の監督のもとにありますが、日常の業務は担当の役員についてその指示に従って働きます。この制度は日本では定着していて、監督系統と日常業務の指示系統と上手に分割されています。たとえば、担当役員から秘書に対して注意をしたいときなど、内容によっては担当役員の代わりに秘書室長(秘書課長)が伝えることも。また、担当役員の仕事の頼み方や秘書への接し方について改めてもらいたいことがあった場合、秘書室長(秘書課長)から役員に折をみて上手に伝えてもらうなど、人事管理の上から便利な点があります。また、男女雇用機会均等法が施行されたいま、女性秘書にも管理職への昇進の道が開かれています。
個人秘書とは、一対一で上司につきます。日本では外資系企業や団体の秘書を考えますが、ほかにもいろいろなケースが存在し、大学教授の秘書、病院長の秘書、法律事務所の秘書、芸能界で働く秘書、ファッション界の秘書、政治家や国会議員の秘書など場は無数にあります。
グループ秘書でも個人秘書でも、その活躍する場所はさまざまです。また、外資系の個人秘書は、外国語を駆使して仕事をし、二カ国語、三カ国語をつかって秘書業務を遂行します。この仕事の内容について述べれば、十分1冊の本が書けるほど。しかし、外国語に堪能であることの必要性や、異文化間の橋渡し的役割など、難しくもやりがいのある仕事ですが、その仕事の本質は「上司を助けて、その仕事目標を達成させる」ことに変わりはありません。